雲間より救いの御手を垂れたもう 掴まば掴めその蜘蛛の糸
滴塵021
本文
雲間より救いの御手を垂れたもう 掴まば掴めその蜘蛛の糸
要点
現代語訳
雲の間から救いの御手が差し伸べられた。掴め、掴むのだ、その蜘蛛の糸を。 注釈
解説
蜘蛛の糸は縁起的・象徴的に救済の手段を示す。信心や修行を通じて救いを掴むことの重要性を強調し、読者に行動を促す。救いは与えられるものではなく、掴む努力が必要であることを詠む信仰歌である。 深掘り_嵯峨
仏の無限の慈悲と、人間の限界を鋭く対比させた歌です。仏は雲間(高み)から手を差し伸べているものの、それは「蜘蛛の糸」のようにか細く、掴み損ねれば終わりという、ギリギリの救済の状況を示唆しています。 「掴まば掴め」という表現は、他力(仏の力)による救済でありながら、それを掴むか否かは己の意志にかかっているという、厳しくも切実な能動性を要求しています。救いはあるが、そのチャンスは一瞬で、極めて危ういものだという、深い緊張感を持つ一首です。